再び、この国で生きていく――

1988年、青森県六ヶ所村から東京へ、

一組の母子が移り住んだ。
母・悦子と、10歳の長男・則夫。

核燃料再処理工場をかかえる故郷の、

これから始まる核の汚染―。

村で生きることを選ぶ夫との食い違い、

そして子どもを守りたい衝動に突き動かされた母の決意は、ひとつの家族を分ける。

それから年月は流れ、

東京での母子の暮らしは新興宗教団体

「種子の会」に身を寄せながら続き、

主人公である則夫は30歳代を迎える。

六ヶ所村に、父親と妹を残したまま...。

2011年3月11日に起こった東日本大震災。

福島第一原子力発電所の事故。

誰しもがかつて経験したことのないこれらの出来事は、

時が過ぎてもなお未整理なものとして、

個々人の中でうごめき続けている。

生きることに憑かれ、死ぬように生きる。

この時間は、いつから続いているものなのか。
しかし再びこの国で生きていくために、

人々の意思はそれぞれの日常へ戻る。
自然、地域のつながりに支えられた暮らしから離れ、後ろ盾のない都市生活のなかに身を置く者たち。
何をよりどころに生きるのか。

映画『息衝く』で描くのは一組の母子と、
彼らが出逢ってきた人々の、拠り所なき現在。
彼らがいま、新たに見つめる世界とは――?